冬の道東旅

冬の道東。そこはずっと、自分にとっての聖地だった。 去年の12月、「ポンニクルの森に入れるのは冬だけ」という事実を知る。もう、行くしかなかった。

紹介を受けた佐々木さんに連絡し、瞬く間に1月のツアーへ申し込む。空路も宿も、考えるより先に手が動いていた。 旅とは、つまり勢いだ。

羽田を立てば、中標津までは1時間半ほど。 いつもは大洗まで走り、船に揺られ、そこから時計回りに北の大地をなぞって辿り着いていた場所。 その距離が一瞬で縮まる感覚は、不思議ですらある。

高度を下げると見えてくる深い森。その風景は、ヘルシンキのそれに重なった。

空港からレンタカーのオフィスへ直行する。 視界には、すでに舞い始めた雪。

凍てついた路面に一抹の不安を覚えたけれど、用意されていたのはレヴォーグSTIだった。 その頼もしい佇まいに、少しだけ強気になれる。

今夜の宿は、半島の付け根に佇む「ポンノウシテラス」。 野付そのものに泊まれるという事実だけで、胸が高鳴る。

荷物を解くのもそこそこに、トドワラへと急いだ。 冬の道東は、一日が短い。午後4時を回れば、もう夜が訪れる。

その早すぎる夜の帳が、ここが「地の果て」であることを静かに、けれど強く感じさせた。

外の明かりで目が覚めた。日が沈むのが早ければ、昇るのも早い。

散歩に出ると、番犬が激しく吠えてくる。 昨日よりは幾分、優しい気もする。

もっと寄って撮りたかったが、噛むらしい。 中途半端な距離で一枚。森山大道にはなれない。

野付半島の先端へ、続く道道950号線。

その一本道は、どこか『マイ・プライベート・アイダホ』のあの景色と重なる。

ポンニクルの森への道は、ゲートで閉ざされていた。 ガイド同伴でなければ、ここには入れない。

佐々木さんが車を降り、ゲートを開けてくれた。

今回のツアーは、ピーナッツギャラリーの清水さんも一緒だった。 清水さんはガイドの研修を受けているらしい。

酷寒を覚悟して挑んだ今回の道東旅。しかし、この間だけ珍しく氷が溶けるくらいの暖かさだった。本来ならもっと森の奥まで歩いて行けたのに残念。

その代わり、森の中でコーヒーを淹れてもらう。 暖かいとはいえ、ここは真冬の北海道。温かい一杯が体に染みた。

豆は清水さんが焙煎したものだという。 香り豊かで、淡白な味わい。手作りの洋菓子ともよく合う。

そこへ、佐々木さんのギターの音色が重なる。 幻想的なひとときだった。

森を離れるのは名残惜しい。 だが、道東にはまだ、訪れたい場所が数多く残っている。

知床峠は冬季通行止め。迂回するには遠すぎるため、以久科原生花園へ向かう。

流氷にはまだ早い。前日までは薄氷が張っていたらしいが、この異例の暖かさで消えていた。 海に氷はない。けれど、そこから望む雪の知床連山は美しかった。

数えきれないほど訪れた、天に続く道。 わざわざ目指したわけではない。通り道にあるから、つい寄ってしまう。

なぜ写真がこれほど左に寄って撮ったのか、記憶にない。 まあ、これはこれでいい。

やっぱり美幌峠から見る屈斜路湖が好き。

屈斜路湖のコタン温泉。 噂通り、白鳥たちが集まっていた。

湯の熱気で暖を取っているのだろう。 美しい。

最後は、鶴居村の鶴見台。 その名の通り多くの鶴がいた。

去り際、一羽がふいに舞い上がる。 イメージ通りの美しい飛翔。 無意識にシャッターを連射していた。このカメラでこれほど連射したのは、初めてだ。

最後までいい旅だった。 北海道を巡ることはもはや自分にとってのライフワークなのかもしれない。

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