EP010 Life of Vladivostok 02

やることはひととおり終わり、あとはバイクの通関を待つだけ。ウラジオストクでの暮らしにもだいぶ慣れてきた。街はコンパクトで歩ける距離にだいたい用が収まるが、坂が多くアップダウンがきつい。海風は強く、気温は一桁台で寒いはずなのに、ダウンの下は汗ばむこともしばしば。レイヤリングが悩ましい。

初日に“ルスキーお兄さん”に教えてもらった「鷲の巣展望台(Орлиное гнездо)」は工事中で立ち入り不可。下の道路側には入れたので、そこで一枚。高台からのほうが映えそうだが、仕方ない。そこまでの道は山並みに迫る急坂で、なかなか大変だった。

土曜はウラジオストク駅前の駐車場で市場が立つらしい。昔ながらのマーケットで人出も多い。目立ったのは“ロシア式キムチ”の屋台。韓国のキムチとは少し違うが、美味しそう。

ベリー系のジャムも手書きラベルでそそられる。ただ、量が多すぎて今回は見送り。

干物も種類豊富で、海の魚だろうが、バイカル湖のオームリにも似た姿がちらほら。

ピクルスの類いもどれも旨そう。

ハムや塩漬けの豚バラは脂厚めで、寒い土地の食べ物だなあと感じる。ローカルな景色に、強い異国情緒。いろいろ買って試したかったが、それができないのがもどかしい。

ロシアの電話番号も手に入れたので、Yandex Goでタクシー登録完了。これが妙に嬉しく、“人権を得た感”。運転手は中央アジア系の方が多く、出稼ぎなのだろう。陽気にずっと話してくれるが、こちらは「ハラショー」以外ほぼ不明。笑

タクシーに乗って向かったのはバイク用品ショップのMOTARI。なにか規制に引っかかったのか看板がなくなっていて隣のホームセンターのような所に間違って入ってそこのスタッフさんに教えてもらった。ここはメタボンさんのブログから情報をいただいた。

店内は品数も十分で、特にモトクロス系が充実。オフロード天国のロシアらしい。

ガエルネのブーツは各モデルがずらり。ヘルメットは知らないブランドとHJCが多め。全体のバリエーションはやや控えめで、結局チェーンクリーナーだけ購入(400ルーブル)。

市内で「Z」のグラフィティを一箇所だけ見かけた。ほかでは見当たらない。戦争が長引くなか、ここウラジオストクでは影響をあまり感じないぶん、人々が意識的に距離を置いているのかもしれない。

天気の良い日曜は、やることも少ないのでトカレフスキー灯台へ。ホテルから約6kmでちょうどいい運動。下りが多いぶん行きは楽だが、海が近づくほど風が強まる。

湾内だから穏やかだろうと思っていたが、ロシアの風は手強い。バイク受け取り初日に渡る予定のニスコヴォドニ・モスト橋は、風が強ければ迂回を考えたほうがよさそうだ。

途中、打ち捨てられたボートがいい被写体に。現地の人も寒がる風で、じわじわ体温が奪われる。気温は8℃ほどでも、風が容赦ない。

やっと灯台が見えてきた。何も調べずに向かったが、ちょうど干潮で歩いて渡れるタイミング。ラッキー。

娘から「自撮り送って」のミッションを受けていたので、逆光を味方に一枚。帰りはホテルまで上り坂が続くので、大人しくタクシーで戻る。

月曜にはバイクを受け取れますように。早く冒険を再開したい。

EP009 Life of Vladivostok 01

死んだように眠った。眠ったというより“意識が落ちた”に近い。そのぶん目覚めは軽く、疲れも抜けている。この日もタスク多め。朝から動きたかったので、隣のホテルの朴さんと8時半に待ち合わせ。一時間進んでいるおかげで、ちょっと得した気分だ。

この日のウラジオストクは曇り、霧も濃い。どこか“ロシア映画”のワンシーンのようでテンションが上がる。距離は日本や韓国と近いのに、街の空気感はぐっとモスクワ寄りだ。

駅前のレーニン像は、人が必ず見上げる高さと角度まで計算されている。像の下で、同じポーズで記念撮影。たまにはこういう観光も悪くない。

駅舎も霧の中。港はすぐ向こうだが、市内は一方通行だらけで、ホテルへは直線400mの距離をぐるっと2km近く回らされる。前日のタクシーは荷物理由で提示額の倍を要求。今にして思えば、最初の額自体が相場の倍だったので、まあまあのボッタクリ。仕方なし。

まずはサミット銀行の両替所へ。ルーブルは日本ではほぼ替えられず、韓国のレートも渋かったので現地両替に賭けたが、これは正解。やや多めに替えたものの、カードが使えない場面が多いので現金はまだ不安。週末で物価感覚を掴んで、月曜に追加両替するか決めるつもりだ。

次はSIMカード。ウラジオストクの車は運転が荒いのに、横断歩道の歩行者にはきっちり止まる。規制が強いのだろうが、この徹底は立派。

キャリアはMTCを選択。今回はFLEXIROAMのグローバルeSIM(ロシアではBeelineと連携)も用意してきたので、冗長性のために別キャリアを確保したかった。

窓口の担当者は無口で表情も硬く、一瞬ひるむ。しかし、言葉があまり通じないこちらにも根気よく説明し、開通確認まで丁寧に対応してくれた。感謝。手続きに時間がかかって後ろに長蛇の列ができたが、誰も文句を言わず、表情も変えずに静かに待っている。ああ、これが“ロシアスタイル”。前日の入国で学んだのも、こういう文化だったのかもしれない。

契約は1カ月無制限(通話&データ)で1,500ルーブル。SIM代や開通料込みで、翌月以降は650ルーブルで延長できる(はず)。

現金と電話番号を手に入れると、ロシアで“人権”を得たような心強さ。これでYandex Goでタクシーも呼べる。

喜んで歩いていたら、前日の“戦友”たちにばったり。こんなに嬉しいとは。いずれにせよ、のちほど通関エージェンシー・GBMのオフィスで合流予定だったのだけれど。

みんなでGBMへ――のはずが、選定理由にした「オフィスに近いホテル」が仇に。GBMは移転済みで、私が自信満々に案内した先は別会社……Google Maps、更新をお願いします。ここではっきりしたのは、ロシアではGoogle MapsよりYandex Mapsのほうが精度も情報量も上ということ。

GBMで今後の流れを確認したのち、税関事務所へ移動して一人ずつパスポートと書類の確認、本人確認。内容は大したことないのに、とにかく時間がかかる。バスがなく徒歩移動だが、線路が渡れず大回りでさらに時間を食う。税関では“偉い人”のタバコ休憩待ちも挟まり、手続き再開まで静かに待機。車両の責任保険や手数料の支払いは翌日へ、とのこと。なるほど。

甘いものが欲しくなり、帰りにホテル前の露店でいちごを購入。食べてみる――やっぱり日本のいちごが世界一美味しい!(偏見込み)

夜は車両組で集まり、労をねぎらってキングクラブを。店はPyatyy Okean(5th Ocean)。

この通りは観光名所らしく若者でごった返している。真ん中は完全に“映えスポット”。

フランスワインも普通に置いてあり、西側制裁の“抜け道”の存在を感じる。値段も法外ではない。市内にはバーガーキングやKFCも通常営業、スーパーには大手メーカーの飲料・酒・食品が並び、戦争の影響は表層からはあまり見えない。人々は“ふつうの生活”を送っている印象だ。

注文はキングクラブ4kg! 同じカニでも、ロシアではキングクラブ、日本ではタラバ、韓国ではテゲ。どれも美味そうだ。

ほかにクマエビ、海鮮唐揚げも頼んで、みんなでワイワイ。苦労は多かったが、“一生語れる武勇伝”がまた一つ増えた。

こういう経験は、お金を払っても買えない。

EP008 Vladivostok

波は高くなかったのに、船は不思議と揺れる。潮流の影響だろうか。とはいえ揺れは強くなく、何より疲れていたのもあってぐっすり眠れた。目を覚ますと、すでに北朝鮮沖を過ぎ、ロシアの領海に入っている。到着予定はウラジオストク時間の17時(日本より1時間早い)。ここからがまた長い。

昼を過ぎるころ、ロシアの島々が少しずつ見えてきた。目的地に近づいている実感が湧く。気温もぐっと下がる。東海市では春のぬくもりだったのに、ここはもう東京の冬並みの冷たさだ。

ふと時計を見ると、電波時計がしっかり働いていてウラジオストク時間に自動で切り替わっている。じつはG-SHOCK選びで一度失敗(GW-M5610U-1BJFは液晶が暗すぎて実用にならず…)。それを聞いた友人が調べて、GBD-200-1DRをプレゼントしてくれた。本当に感謝しかない。

いよいよウラジオストクが見えてきた。行き交うコンテナ船の多さに、戦争の影響はあまり感じられない。

岸が近づくにつれて乗客もそわそわし、デッキには人があふれる。そして皆さん本当によくタバコを吸う。元喫煙者として気持ちは分かるが、それでも驚くほどの本数だ。

お、街並みの全景が見えてきた。あの有名な黄金橋も。

ウラジオストクからユーラシア横断をスタートするソンフンさん・ユワンさん親子にも出会う。ユワンくんは小6で、1年休学して旅に出るという。人生でかけがえのない一年になりますように。友だちのようで兄弟のような、本当に仲の良い親子で羨ましい。

スパソ・プレオブラジェンスキー大聖堂が「ここはロシアだ」と教えてくれる。船上から見る街は想像より都会的で、規模も大きい。

写真で見慣れたウラジオストク港が目前に。ここから本格的にユーラシア横断が始まると思うと胸が高鳴る。予定より1時間早い16時に到着――喜んだのも束の間だった。

ここから、ウラジオストク流の洗礼。入国の仕組みが独特で、まずは岸壁に降ろされたコンテナから全荷物を出して積み上げる(これだけでも相当時間がかかった)。その後、乗客が自分の荷物を見つけて持ち、イミグレーション(入国審査)と税関を通って入国する方式だ。

降りる順番は、①預け荷物なしのロシア人、②預け荷物ありのロシア人、③預け荷物なしの外国人、④預け荷物ありの外国人。覚悟して待っていたが、それでも進みが遅い。審査場のキャパシティにも課題があるのだろう。

しかもイミグレーションまでは階段で2階へ、外に出るにも階段を下る必要がある。重い荷物を抱えての移動は相当きつい。そこで、同じく車・バイクで来た6組で自然とチームを組み、協力して運ぶことに。それでも大変で、あれほど寒いと思っていたウラジオストクなのに汗びっしょりだ。

すべて終えて外に出たのは20時30分。到着から4時間半。これがロシアのオリエンテーションなのだろう。ロシア式の「待つ」「受け入れる」を少し学んだ気がする。そのおかげで仲間も増え、絆も深まった。

宿が隣同士の朴さんと同じタクシーでホテルへ向かい、チェックイン。今回のTeplo Hotelには「20時ごろ着」と伝えていたが、さらに1時間遅れ。支払いはクレジットカード不可、しかもまだルーブルに両替していない。翌日払いをお願いすると、快くOK。部屋が1階なのも助かった。

小さなホテルだが、清潔でセンスがよく、居心地もいい。バイク通関まで約1週間の滞在になるため、いつも以上に慎重に選んだ。Booking.comなど欧米系は使えないので、Yandexで調べてロシアの予約サイト「Ostrovok」を利用。サービスは他と遜色なく、使い勝手も良かった。

シャワーを浴びて夕食をどうするか考えていると、隣のホテルの朴さんから「遅くまでやっている韓国料理屋がある」と連絡。22時を回っている時間帯で開いている店は少ないが、行ってみることに。

まずはビール――まさかのアメリカ・バドワイザー。長い一日の後の一杯は格別だ。お疲れさま。

頼んだのは豚肉炒め。少し甘めだが美味しい。昼はカップ麺で済ませたので、今日初めての“ちゃんとした食事”が余計に沁みる。

朴さんは大学を定年退職後、車でユーラシア横断へ。モンゴルをはじめ多くの国を走った経験豊富なベテランで、アドバイスも優しさも山盛り。たくさんお世話になった。

店を出て会話しながら歩いていると、コンビニからソーセージを手に出てきたロシアの方が声をかけてくれた。夜景スポットを教えたいらしい。Yandex MapとGoogle翻訳で示してくれたのは「鷲の巣展望台(Орлиное гнездо)」。手にはSonyのミラーレス。写真好きとして“ぜひ撮ってほしい景色”だったのだろう。見た目は強面でも、話すと温かい――ロシアの人はそんな印象だ。

初日から、バイクなしでもアドベンチャー感はマックス。ここからどうエスカレートしていくのか、楽しみだ。