EP003 Landed in Busan, Korea

昨夜遅くまで奇声を上げつつ花札と宴会を楽しんでいたおばさん・おじさんたちが、何事もなかったように6時過ぎにはもう朝食の列に並んでいる。とにかく元気がすごい。こちらも負けじと並んで朝食を取り、ひと息ついていると、「予定より30分早く釜山港に到着するので下船準備を」とアナウンス。船まで気が早い。

荷物をまとめてロビーへ向かうと、すでに長蛇の列。皆さん行動が早い。下船もバイクは別動で、スタッフが車両甲板まで案内してくれた。

車両甲板の扉が開く瞬間が、いちばんワクワクするのかもしれない。

扉が開くと、スタッフが固定ベルトを手際よく外していく。無駄のない、丁寧な仕事ぶりだ。

下船すると外で Panstar 釜山のスタッフが待っており、税関検査場まで引率。バイクを検査場に置き、人だけ釜山国際フェリーターミナルの3階へ行って入国手続きを済ませる。外へ出ると再びスタッフが待っていて、先ほどの税関へ案内してくれた。——その前に保険オフィスで韓国内の自動車保険(1週間で約6〜7千円)と保証金(約1万6千円)を支払う。

税関の検査は本格的で、荷物をすべて下ろして X線に通し、気になるものは中身まで確認。職員はきっちり仕事をしていて頭が下がるが、実際に降ろして詰め直すのは自分なので、汗だくになる。

すべて終えて外へ出ると、大都会の混雑に圧倒される。車の進行方向が日本と逆なので身構えていたが、道幅が広く車も多いぶん、前の車の流れに合わせていればすぐ慣れた。むしろ細い路地に入ると一瞬方角がわからなくなる。まあ、そのうち慣れるだろう。

まず向かったのはバイク用品店。チェーンクリーナーとルーブを購入する。スプレー缶は船に持ち込めないと思っていたが、特に指摘はなし。飛行機と船でルールが違うのかもしれない。

店は小ぶりながら清潔で、必要なものはひと通り揃う。店員さんも丁寧で親切。最近の韓国のサービスの高さを感じる。

今回は MOTUL のクリーナーとルーブを選択。大手だし間違いない。

気づけば昼どき。食事に行こうとしたら、先にバイクがお腹を空かせている様子。まず給油へ。

韓国は不思議とハイオクを扱うスタンドが少ない。街には高級車が溢れているのに。Google マップは政治的事情で使いづらいので、NAVERマップやKAKAOマップなどローカルの地図アプリでハイオク取扱店を検索して向かう。

一般ガソリン(휘발유)はオクタン価91〜94、高級ガソリン(고급 가솔린〈ハイオク〉)は94以上と定められているらしい。

バイクがお腹いっぱいになったところで、今度は人間の番。

近くにテジクッパ(돼지국밥)の店を発見。釜山名物で、いつか食べたいと思っていた。

昼過ぎの微妙な時間帯で店内は空いている。日本だとランチとディナーの間は閉める店も多いが、韓国は開いていることが多い。

いよいよ実食。

豚肉の甘みとスープの辛みが合わさって、やさしく旨い。

食後は西へ。韓国では法律でバイクの高速道路走行が禁止だが、国道の規格が高く、体感は小田原厚木道路に近い。制限速度80kmの区間も多い。

ただし、休憩所や道の駅のような場所が少なく、休むタイミングとスペースを見つけにくい。駐車場付きのコンビニをやっと見つけて一休み。

この日の目的地は釜山から約70kmの晋州市(チンジュ市、진주시)。初日なので無理はせず、Booking.com で見つけた手頃で評判の良いホテルへ。

バイクを停めようとすると、支配人が出てきて屋根付きスペースに案内してくれた。ありがたい。

部屋もスタンダードダブルの予約だったが、アップグレードしてくれたようで、広く清潔で少し贅沢。

晩ごはん時になり、支配人おすすめの店へ向かったが、「料理は二人前から」と断られる。韓国の人気店では一人客お断りがあるのは理解しつつも、やっぱり少し寂しい。

プランBのスンドゥブチゲ専門店へ。店構えからして期待できる——Korea Traditional Groove!

スンドゥブチゲとビビンバのセットは、まさに本場の味。今回の旅で少しは痩せるかも、と思っていたが、この調子だとむしろ増えそうだ。

EP002 Panstar Cruise

川崎から大阪までの約500kmを走り抜けて、DesertXとも少しは打ち解けたつもりだった。ところが、前夜に泊まった堺浜楽天温泉 祥福から大阪国際フェリーターミナルまでのわずか10kmで、なぜか機嫌がツンツン。ギアが渋く、とくにニュートラルが入りにくい。購入時からの持病で、慣らし後は落ち着いたと思っていたのに、また悪化。まあ、そのうち良くなるだろう。

余裕を持って出たつもりが、大阪の湾岸線は想像以上の混雑。大型トラックも多く、気を遣う。定刻どおり大阪国際フェリーターミナルに着き、駐車場にバイクを止めて受付で「バイクで韓国に行きます」と伝えると、スタッフが二人がかりで税関エリアへ案内してくれた。少し待つと職員が来て、書類と荷物をさっと確認して無事クリア。出国側はチェックが比較的ゆるいのかもしれない。

手続きが終わっても出発まで時間があったので、3階のラウンジへ。最近リニューアルしたらしいが、人影はなく、どこか寂しい。ただ、きれいで広々としていて居心地はいい。

キレイで広々していて快適な空間だった。

チャンスとばかりに荷物を広げ、溜まったタスクを片付ける。まだもう少しコンパクトにまとめる練習が必要だ。リラックスしすぎたのか、連絡に来たパンスターフェリーのスタッフを少し驚かせてしまった。反省。

13時を過ぎて乗船案内が始まる。バイクは別ラインで誘導され、真っ先にチェックイン。他の乗客はバス移動らしい。今回はバイクが自分だけで、船内の駐車スペースも余裕たっぷり。先頭に停められたので、下船も楽そうだ。

バイクを停めると、船のスタッフが客室エリアまで付き添ってくれた。ちょっとしたVIP待遇で、むしろ申し訳ない。鍵はロビーのカウンターで受け取る方式。大人しく列に並んでいると、横から韓国のおばさまたちがスッと割り込んでくる——あ、ここはもう韓国だ、と悟る。するとスタッフのお姉さんが「順番にご案内します」と制して、まず私のチケットを確認し鍵を手渡してくれた。これもまた強い。向かう先では、さらに強いバイタリティが求められるのかもしれない。

今回の部屋はスタンダードルームB。定員2名の個室をひとりで使う。二段ベッドにテーブルと椅子、テレビもあり、航海中は韓国の番組が流れていた。清潔で小洒落た空間で快適。ここでも写真を撮るやいなや、すぐに荷物を広げて自分仕様にする。

船内は、雰囲気も店も人も、まるで韓国そのもの。乗客も9割以上は韓国の方だろう。下関発だとまた違うのだろうか。

夕食は18時半開始のはずが、18時前から大行列。韓国では食事をしっかり取ることが何より大切で、挨拶も「ご飯食べた?」が定番だ。時間に余裕があると踏んで一度部屋でくつろぎ、少し早めに食堂へ戻ると、もう配膳が始まっていた。まだ18時15分なのに。これもまた韓国らしい。

慌てて列に加わる。ビュッフェ形式だが、皆さんの勢いがすごい。料理はすぐに空になり、スタッフがせっせと補充する。このエネルギッシュな光景に、なぜだか少し胸が熱くなる。

つられてこちらも取りすぎた。味は本格派で、どれもなかなか美味しい。気づけば満腹。

団体客が多かったこともあり、場はさらに熱気を帯びる。日本の“ふつう”とは、どこか違う。文化の違いなのか、このエネルギーはどこから来るのだろう。背後ではおばちゃんが突然歌い出し、また驚かされる。

もしかすると、この旅で自分が求めているのは、こうした“生命力”なのかもしれない——そんな気がした。まだ出発して間もないのに、感じることがいくつもある。

EP001 Ducati Hamamatsu

前日までの積載シミュレーションとイメトレは完璧だった。3つのパニアケースに、Filson のドライバッグ、バックパック、タンクバッグ、フロントとサイドのバッグ2つ。これならいける——そう思っていた。

記念すべきユーラシア横断の初日。自撮りをキメて意気揚々と出発したものの、背負ったバックパックとドライバッグが干渉して身動きが取りづらい。モンゴルとパミールハイウェイを想定して選んだガエルネの SG-12 も、足のコントロールがうまくできない。慣らしたはずなのに……。このままでは危ない。モンゴルに着く前に事故しかねないと判断し、いったん自宅へ U ターン。

ブーツをガエルネの G ミッドランドに履き替え、バックパックは背負うのをやめてドライバッグの上に載せるスタイルへ変更。うん、これなら何とかなる。あとは荷物に自分が慣れるだけだ。

準備を終えて再出発——のはずが、地面に小さなプラスチック片が落ちているのを発見。よく見るとウィンカーのスイッチだ。元の位置に差し込んでみたが動作が安定しない。参った。取り急ぎ Ducati 東名横浜さんに連絡するも、まさかの定休日。グーグル先生に頼って取り扱い店へ片っ端から電話したが全滅。範囲を広げて検索すると Ducati 浜松さんがヒット。ただし Google マップでは定休日表示。それでもダメ元で電話してみると営業の方につながり、今日は営業日とのこと。事情を話すと「見られる範囲で対応します」と。もうこの時点で神対応。

ウィンカーなしで川崎の下道を抜けて東名へ、浜松を目指す。とはいえウィンカーがないのは本当に大変で、周りの車にも迷惑をかけてしまったと思う。車線変更は最大限注意したけれど、イキってる人に見えたかもしれない。本当に申し訳ない。

本当は浜松まで一気に行きたかったが、無理は禁物。足柄 SA で休憩しようと停めたら——バイクが右に倒れそうで降りられない。何とかバランスを取りながら降りたが、風でも倒れそうなほど直立している。初期 DesertX のサイドスタンドは構造的に課題があるうえ、積載でサスが沈むとますます立ち気味になる。

うどんをすすりながらも、駐輪場のバイクが倒れていないか気が気でない。さて、このままヨーロッパまで行けるのか。解決策を見つけないと——とにかく浜松へ急ぐ。

Ducati 浜松に着くと、電話に出てくれたセールスの青木さんが温かく迎えてくれた。川崎から向かっていると伝えた時点でも驚かれていたが、韓国に渡りロシア、中央アジアを抜けてヨーロッパまで行く計画を話すとさらに驚きつつ、代表の鈴木さんも対応に出てくださる。「これから長い旅に出るなら、しっかり直さないとね」と、展示車の部品と交換して修理してくださった。本当にありがとうございます。

さらに、サイドスタンドが立ちすぎる問題まで対応。「見て見ぬふりはできないよ」と鈴木さん。ありがたすぎて、思わず泣けてきた。

記念すべき旅の初ステッカー。貼る位置を鈴木さんと青木さんが入念に確認し、

鈴木さんが丁寧に貼ってくださった。感謝、感謝、大感謝。

寡黙な八木さんからは、職人の確かな腕と温かさがにじむ。

代表の鈴木さん、セールスの青木さん、馬場さん、サービスの八木さん、田村さん——皆さんの応援が、そのまま心に届く。

Ducati 浜松さんを出て、約束の地・大阪へ。ウィンカーが使えるだけで、こんなに楽になるのか。気のせいかもしれないが、マシンも朝より機嫌がいい。亀山 PA で名物の松阪牛丼をいただく。午前中のうどんとは打って変わって、驚くほどうまい。やっぱり、人は心持ちひとつで味まで変わる。

食後、駐車場に戻ると、最高に格好いい大陸横断マシンが目の前にあった。

初日にして、すべてが最高すぎる。ワクワクが止まらない。