EP006 Kangwondo

大田(デジョン、대전)から江原道(カンウォンド、강원도)の東海(ドンヘ、동해)市までは、下道で約300km。山が多い地域なので峠道を考えると時間がかかりそうだし、午後からは雨予報。できるだけ早めに動きたい。

「東横イン 大田政府庁舎前」は朝食が6時半から。5時半に起きて身支度を済ませ、しっかり食べて出発。

その前に、ホテル横のハイオク対応スタンドで満タンに。DesertXは21L入るので、この一回で東海まで余裕のはず。給油機の質問がやたら多く、しかも急かされるのは相変わらず。カード決済は先に約1万5,000円を仮決済し、給油後に取消して実際の金額を請求する方式。国や文化でシステムが変わるのが面白い。ロシアは“先払い→給油”らしいので、それもまた体験が楽しみ。

大田から北東へ国道を進むが、休憩ポイントがなかなか見つからない。約2時間走って槐山郡(ケサングン、괴산군)でようやくセブンイレブンを発見して休憩。店内にトイレがあることを期待したが、ここにはなし。甘くないコーヒーで一息つきつつ、トイレ問題に悩む……が、悩んでいても仕方ないので再出発。

バイクにまたがり進路を迷っていたその瞬間、右側へ“ストン”。踏ん張ってみたが重さに勝てず、ダメージが少ないようにゆっくり寝かせるしかなかった。旅の“初・立ちごけ”。人も車もそれなりに通る場所で良かった。韓国区間は、ロシア前のオリエンテーションとして、優しめの条件でいろいろ試せていると前向きに捉える。

外せる荷物を降ろしてひとりで引き起こしに挑戦したが、これが難しい。YouTubeでイメトレしていたものの、あの投稿者たちは間違いなく怪力だ。アドベンチャーバイクはそう簡単に起こせない。助けを求めようにも近くはご年配ばかりで頼みにくい――そこへ一台の車が止まり、爽やかなお兄さんが「手伝いましょうか?」。神。二人がかりでなんとか起こせたが、ひとりだと厳しい。モンゴルに行く前に練習しておこう。

被害は右パニアに軽い擦り傷だけ。Ducati純正パニアは丈夫で、強化プラの傾斜が衝撃を逃がしてくれた。Unit Garageと迷ったが、頑丈さで純正を選んで正解。

アドレナリンでトイレ欲求は一時的に消えたが、しばらく走るとやっぱり限界。さらに一時間走って、スタンド併設のトイレを見つけて無事解決。後でTwitterでも「韓国はコンビニにトイレがないことが多いので、少し大きめのカフェや飲食店の入る建物、公園を狙うと良い」と多くのアドバイスをいただいた。感謝。

たくさんのアドバイス、ありがとうございました!

トイレの次は、当然ながら“飯”。忠清道(チュンチョンド、충청도)から江原道へ抜ける道は山・川・湖が美しく、観光地としても有名。店は多いが、辛いチゲ(メウンタン)や焼肉が中心で、ひとりで入りづらい所も少なくない。見た目の好みから外れる店も多く、贅沢とは分かりつつも迷う。

そんな中、店の前を通ると満足げに出てくる人たちの表情が目に入り、「ここは間違いない」と直感して入店。

駐車場の混み具合でも再び確信。ヘルメットを外してカバンに置くと、目に入ったのはUTPのステッカー。フィジカルにはひとり旅でも、実感としては家族や友人、先輩後輩、SNSのフォロワーと一緒に旅している。つながりが大事。このブログも、その共有のために更新している。

人気店ゆえ店内は満席で、テラス席へ。ひとりで頼めるのは胡麻カルグクスか胡麻スジェビのみ。昨日はカルグクスを食べたので、今日は胡麻スジェビに。日本の“すいとん”に近いポピュラーな料理だが、この胡麻スジェビは初。郷土料理らしく、久々のやさしい味が心身に染みた。人気の理由がよく分かる。

お腹が満たされると景色が一段と鮮やかに見える。山も川も本当にきれいで、こういう自然を求めて多くの人が都会から訪れるのだろう。

東海まではもうひと踏ん張り。正直、これまでの韓国の道は高速道路のような国道ばかり走ってしまい、バイク的に“面白み”が少なかった。しかし江原道の道はほどよいワインディングと美しい自然が合わさり、走っていて実に楽しい。ツーリング中のバイクとも初めてたくさんすれ違った。

ただし一つだけ困りものが“縦溝”。特に急なカーブや峠に多く、出てくるたびに寿命が縮む。車には有用らしいが、バイクとは相性が悪く、フロントのグリップ感が薄れ左右に振られやすい。道が険しくなるほど増えるので、精神的にも削られる。

文句を言いつつも、目的地の「Donghae Oceancity Residence Hotel」に無事到着。下道300km、立ちごけ1回、逆走3回――慣れたと思った頃がいちばん危ない。大きな道では平気でも、細い道に入ると癖で左側へ寄ってしまう。対向車でハッとして右側へ退避、なんてことも。もっと意識していこう。危ないから。

今回の宿はレジデンスタイプで、火曜のウラジオストク行きフェリーまで連泊予定。ロシア前にしっかりメンテしたくて選んだが、設備十分で価格も手頃。唯一の難点は室温が高めで調整しづらいこと。特にオンドルの熱気が強い。ただ、その分洗濯物はすぐ乾く。

近所のコンビニに寄ると、缶ビールがずらり。コロナ前は韓国ビール一色だったのが、今は輸入物とクラフトが目立つ。正直、昔ながらの韓国ビールは“お世辞でも…”というものが多かったので、みんな気付いたのかもしれない。

サントリーのプレミアムモルツを見つけ、嬉しくて500mlをつい2本。やっぱり自分にはこれが一番合う。大好き。

軽く一杯やってくつろいでいると、もう夕食の時間。周囲に店は多いのに、日曜のせいか閉まっている所が多く、ようやく見つけたのはスンデグッパ専門店――しかも“辛い”やつ。

辛くないスンデグッパを頼んだつもりが、やっぱり辛かった。でも美味しい。そろそろ刺激弱めのものを選びたいところ。

いよいよ、韓国での旅も最終盤。

EP005 Ducati Daejeon

ロシアに渡ると当分はDucatiのディーラーがない。気になる箇所だけでも見てもらおうと、ウラジオストク行きフェリーが出る東海(ドンヘ、동해)へ向かう途中にあるDucati Daejeon(大田〈テジョン、대전〉)を目指した。都合がいい立地だ。

ホテルを出てしばらく国道を走り、少し飽きてきた頃にナビが迂回ルートを提案。日本の県道のような道へ入ると、ようやくツーリングらしい気分になる。コチュジャンで有名な淳昌(スンチャン、순창)には、見事なメタセコイア並木。久しぶりにバイクを停めて記念撮影――やっぱりこういう道が好きだ。

ところが、テンションが上がったところでまた雨。それも土砂降り。昨日も今日もずっと雨だが、北海道での経験と全身ゴアテックスのおかげで致命的にはならない。とはいえ、晴れてくれるに越したことはない。

昼はひとりでも入れそうな店で、アサリの味噌チゲを注文。ここ数日辛いもの続きでお腹の調子がいまひとつなので、今回は“辛くない”を選ぶ。韓国で辛くないメニューを探すのは、なかなか骨が折れる。

アサリのすっきりした旨みと味噌のまろやかさが胃にやさしい。そろそろ和食も恋しくなってきた。

食後も雨は止まず、とりあえず国道に戻って大田へ。北へ行くほど気温は下がり、山道が増えて道も険しくなる。縦溝がある区間は特に走りづらい。右ヘアピンは相変わらず手強く、早く慣れないと今後に響きそうだ。

二時間ほど走って限界を感じ始めた頃、田舎のスーパーが現れる。嬉々としてバイクを停め、缶コーヒーで小休止。韓国版ジョージアは驚くほど甘い。辛いものはとことん辛く、甘いものはとことん甘い――極端さが面白い。

休んでいるうちに空が明るくなり、そこからは順調。あっという間にDucati Daejeonへ到着した。

店は“バイク屋”というより高級ブティック。

大きな窓から差し込む光が、Ducatiの美しい車体にくっきりとコントラストを与えている。実に気持ちがいい。

サービススタッフが足まわりと空気圧をチェックし、積載重量を考慮して少し高めに調整。ほかに問題はなし。これで安心してロシアへ渡れそうだ。

Ducati Daejeonの皆さん、丁寧な対応をありがとうございました。

宿は店の近くに押さえていたので、この日のメインはここで終了。

予約したのは「東横イン 大田政府庁舎前」。韓国にも東横インがあるとは知らなかった。システムも部屋も、あの“安定の東横イン”そのままでちょっと嬉しい。

シャワーのあと地下駐車場へ降り、二日連続のチェーンメンテ。どうやら明日も雨らしく、三日連続になりそう。きれいになったチェーンを見ると気分が上がるし、頑張ってくれているバイクに少しでも恩返しができた気がする。

晩ごはんはカルグクスと

ワンマンドゥ。

周辺には店が多いのに、営業しているところが少なく、開いていても“ひとり不可”の店が多い。逆に客が誰もいない店は不安だ。その点、このカルグクス専門店はひとりでも問題なく、客入りもよくて安心。料理はおいしく、しかも安い。量は多めだが、あまりに美味しくて完食してしまった。ちょっと食べ過ぎたかもしれないが、明日は東海(ドンヘ)市まで下道で約300km。しっかり栄養をつけておこう。

EP004 Namdo

ホテルを出て、再び西へ。国道は思ったほど混んでおらず、流れも軽快。みんなだいたい時速80km超で走っていて、北海道を走ったときの感覚を思い出す。ただ、信号やハンプ、いわゆる“ニセハンプ”、制限速度の変化が多く、オートクルーズの出番は少ない。

空はどんより。出発して間もなく、ぽつぽつと雨。全身ゴアテックスなので濡れる心配はないが、路面は滑りやすい。縦溝の区間も多く、ヒヤッとする場面が続く。安全第一でいこう。

蟾津江(ソムジンガン)を渡って全羅南道(チョルラナムド)へ。ここはご飯が美味しいことで有名なので、前から楽しみにしていた。観光情報はほどほどだが、食の下調べだけは入念に済ませてある。

向かったのは順天市の「ナムニョクドゥル・パプサン」。11時の開店に合わせて到着し、のんびり写真を撮っていたら、雨の中にもかかわらず次々と人が入っていく。これはまずい、と急いで入店すると、ちょうど一卓だけ空いていて他は満席。滑り込みセーフ。

店内は広いが部屋のように仕切られており、テーブルも大きいので収容できる組数は多くない。ひとり客は自分だけで、店員さんから「ひとりだとイシモチ定食しか頼めないけど大丈夫?」と確認。まさにそれ目当てなので問題なし。韓定食は基本的に二人以上を想定しているため、ひとりだと断られることも多い。ひとり飯のときはクッパ類が無難だ。

運ばれてきた料理は、とにかく種類がすごい。予想をはるかに超える品数だ。イシモチ定食は約2,300円と聞くと高めに感じるが、この内容ならむしろ割安。数だけでなく味のレベルも高く、おかず一品でご飯が一杯いけそう。米は紅色がかっていて、特別な品種を使っているらしい。どれも本当に美味しかったが、さすがに量が多くてひとりでは完食できず。二人以上推奨の理由がよく分かった。

ごちそうさまでした。

外に出ると、待機列がえげつない。雨の中で外待ちの人も。さすがの人気店、早めに来て正解だった。

食後は目的地を決めずにさらに西へ。雨脚が強まり、疲れも出てきたので休みたくなるが、国道沿いには休める場所が少ない。日本の国道のように町の中を通らず、高速道路のように町から離れて作られているので、休むには国道を外れて町に入る必要がある。

二時間ほど走って適当な町に入り、コンビニでコーヒー休憩をしながら今夜の宿を検索。西側は良さそうなホテルが少なく、あっても観光地価格で強気設定。仕方なく、このあたりで一番大きい都市・光州(クァンジュ)へ北上することにした。

走っていると、メーターに燃料警告。残り約60km。NAVER Mapでハイオクを扱うスタンドを探すと、約24km先に一軒あるだけ。範囲を広げてもそこしかない。休みだったら詰む……とにかく向かうしかない。

燃料計と残距離の辻褄が合わずドキドキしながら走っていたら、ついに表示は0kmに。メーターはあまり信用するなと言われてはいたが、なんとか到着できて一安心。

韓国のセルフ給油機はプロ仕様(?)で勢いが強く、うまくコントロールしないとガソリンが跳ねる。もう少し優しくしてほしいところ。さらにカード決済は、先に約1万5,000円を仮決済し、給油後にその仮決済を取消して実際の金額を請求する方式(少なくともこのS-OILはそうだった)。最初はちょっとびっくり。

0km表示から満タンにしたら約19L入ったので、実際はタンクに2Lほど残っていた計算。リザーブ的なものだろう。良い学びになった。

ホテルは今回もBooking.comで予約。リーズナブルだがしっかりしており、プロ野球チームが光州で試合の際に指定で利用することで有名らしい。

部屋は白とネイビーで整っていて、リラックスできる。大きな窓から入る光もいい。ちなみにBooking.comで見ると、妙に安くてきれいなホテルは窓なしの部屋が多い。ラブホテルの転用らしく、それはそれで問題ないが、窓がないと圧迫感があって個人的には苦手。こういうこだわりを言えるのも今だけかもしれないけれど。

雨の中を走ってきたので、まずはチェーンメンテ。センタースタンドを付けておいて本当に良かった。これから活躍の場がますます増えそうだ。わがDesertXも、やっとアドベンチャー外装が形になってきた。ロシアに渡る前に一度、洗車しておこう。

晩ごはんはホテル周辺の人気店を調べて行ってみたが、ここもひとりは不可。色使いやフォント、デザイン、すべてが“韓国にしかない”感じで、久しぶりに見るとたまらない。絶対美味しいはずなのに残念。

代わりに近くで空いていそうな店に入り、ひとりでも快く受け入れてもらえた。

まずはおかずがずらり。約900円のキムチチゲを頼んだだけでこの品数。韓国の物価はかなり上がっているが、こういうところではまだコスパの良さを感じる。

チゲも“本場の味”。

ちゃんと発酵したキムチの深みが効いていて、間違いなく美味しい。ただ、なかなかの辛さで、お腹が痛くなってしまい完食できず……悔しい。

ホテルへ戻ってブログを更新。ふと窓の外を見ると、今の韓国を象徴するような風景が広がっていた。過去と現在、そして未来が同居し、激しく変化している。インドのムンバイとも違うカオスが、ここにはある。実に面白い。

EP003 Landed in Busan, Korea

昨夜遅くまで奇声を上げつつ花札と宴会を楽しんでいたおばさん・おじさんたちが、何事もなかったように6時過ぎにはもう朝食の列に並んでいる。とにかく元気がすごい。こちらも負けじと並んで朝食を取り、ひと息ついていると、「予定より30分早く釜山港に到着するので下船準備を」とアナウンス。船まで気が早い。

荷物をまとめてロビーへ向かうと、すでに長蛇の列。皆さん行動が早い。下船もバイクは別動で、スタッフが車両甲板まで案内してくれた。

車両甲板の扉が開く瞬間が、いちばんワクワクするのかもしれない。

扉が開くと、スタッフが固定ベルトを手際よく外していく。無駄のない、丁寧な仕事ぶりだ。

下船すると外で Panstar 釜山のスタッフが待っており、税関検査場まで引率。バイクを検査場に置き、人だけ釜山国際フェリーターミナルの3階へ行って入国手続きを済ませる。外へ出ると再びスタッフが待っていて、先ほどの税関へ案内してくれた。——その前に保険オフィスで韓国内の自動車保険(1週間で約6〜7千円)と保証金(約1万6千円)を支払う。

税関の検査は本格的で、荷物をすべて下ろして X線に通し、気になるものは中身まで確認。職員はきっちり仕事をしていて頭が下がるが、実際に降ろして詰め直すのは自分なので、汗だくになる。

すべて終えて外へ出ると、大都会の混雑に圧倒される。車の進行方向が日本と逆なので身構えていたが、道幅が広く車も多いぶん、前の車の流れに合わせていればすぐ慣れた。むしろ細い路地に入ると一瞬方角がわからなくなる。まあ、そのうち慣れるだろう。

まず向かったのはバイク用品店。チェーンクリーナーとルーブを購入する。スプレー缶は船に持ち込めないと思っていたが、特に指摘はなし。飛行機と船でルールが違うのかもしれない。

店は小ぶりながら清潔で、必要なものはひと通り揃う。店員さんも丁寧で親切。最近の韓国のサービスの高さを感じる。

今回は MOTUL のクリーナーとルーブを選択。大手だし間違いない。

気づけば昼どき。食事に行こうとしたら、先にバイクがお腹を空かせている様子。まず給油へ。

韓国は不思議とハイオクを扱うスタンドが少ない。街には高級車が溢れているのに。Google マップは政治的事情で使いづらいので、NAVERマップやKAKAOマップなどローカルの地図アプリでハイオク取扱店を検索して向かう。

一般ガソリン(휘발유)はオクタン価91〜94、高級ガソリン(고급 가솔린〈ハイオク〉)は94以上と定められているらしい。

バイクがお腹いっぱいになったところで、今度は人間の番。

近くにテジクッパ(돼지국밥)の店を発見。釜山名物で、いつか食べたいと思っていた。

昼過ぎの微妙な時間帯で店内は空いている。日本だとランチとディナーの間は閉める店も多いが、韓国は開いていることが多い。

いよいよ実食。

豚肉の甘みとスープの辛みが合わさって、やさしく旨い。

食後は西へ。韓国では法律でバイクの高速道路走行が禁止だが、国道の規格が高く、体感は小田原厚木道路に近い。制限速度80kmの区間も多い。

ただし、休憩所や道の駅のような場所が少なく、休むタイミングとスペースを見つけにくい。駐車場付きのコンビニをやっと見つけて一休み。

この日の目的地は釜山から約70kmの晋州市(チンジュ市、진주시)。初日なので無理はせず、Booking.com で見つけた手頃で評判の良いホテルへ。

バイクを停めようとすると、支配人が出てきて屋根付きスペースに案内してくれた。ありがたい。

部屋もスタンダードダブルの予約だったが、アップグレードしてくれたようで、広く清潔で少し贅沢。

晩ごはん時になり、支配人おすすめの店へ向かったが、「料理は二人前から」と断られる。韓国の人気店では一人客お断りがあるのは理解しつつも、やっぱり少し寂しい。

プランBのスンドゥブチゲ専門店へ。店構えからして期待できる——Korea Traditional Groove!

スンドゥブチゲとビビンバのセットは、まさに本場の味。今回の旅で少しは痩せるかも、と思っていたが、この調子だとむしろ増えそうだ。

EP002 Panstar Cruise

川崎から大阪までの約500kmを走り抜けて、DesertXとも少しは打ち解けたつもりだった。ところが、前夜に泊まった堺浜楽天温泉 祥福から大阪国際フェリーターミナルまでのわずか10kmで、なぜか機嫌がツンツン。ギアが渋く、とくにニュートラルが入りにくい。購入時からの持病で、慣らし後は落ち着いたと思っていたのに、また悪化。まあ、そのうち良くなるだろう。

余裕を持って出たつもりが、大阪の湾岸線は想像以上の混雑。大型トラックも多く、気を遣う。定刻どおり大阪国際フェリーターミナルに着き、駐車場にバイクを止めて受付で「バイクで韓国に行きます」と伝えると、スタッフが二人がかりで税関エリアへ案内してくれた。少し待つと職員が来て、書類と荷物をさっと確認して無事クリア。出国側はチェックが比較的ゆるいのかもしれない。

手続きが終わっても出発まで時間があったので、3階のラウンジへ。最近リニューアルしたらしいが、人影はなく、どこか寂しい。ただ、きれいで広々としていて居心地はいい。

キレイで広々していて快適な空間だった。

チャンスとばかりに荷物を広げ、溜まったタスクを片付ける。まだもう少しコンパクトにまとめる練習が必要だ。リラックスしすぎたのか、連絡に来たパンスターフェリーのスタッフを少し驚かせてしまった。反省。

13時を過ぎて乗船案内が始まる。バイクは別ラインで誘導され、真っ先にチェックイン。他の乗客はバス移動らしい。今回はバイクが自分だけで、船内の駐車スペースも余裕たっぷり。先頭に停められたので、下船も楽そうだ。

バイクを停めると、船のスタッフが客室エリアまで付き添ってくれた。ちょっとしたVIP待遇で、むしろ申し訳ない。鍵はロビーのカウンターで受け取る方式。大人しく列に並んでいると、横から韓国のおばさまたちがスッと割り込んでくる——あ、ここはもう韓国だ、と悟る。するとスタッフのお姉さんが「順番にご案内します」と制して、まず私のチケットを確認し鍵を手渡してくれた。これもまた強い。向かう先では、さらに強いバイタリティが求められるのかもしれない。

今回の部屋はスタンダードルームB。定員2名の個室をひとりで使う。二段ベッドにテーブルと椅子、テレビもあり、航海中は韓国の番組が流れていた。清潔で小洒落た空間で快適。ここでも写真を撮るやいなや、すぐに荷物を広げて自分仕様にする。

船内は、雰囲気も店も人も、まるで韓国そのもの。乗客も9割以上は韓国の方だろう。下関発だとまた違うのだろうか。

夕食は18時半開始のはずが、18時前から大行列。韓国では食事をしっかり取ることが何より大切で、挨拶も「ご飯食べた?」が定番だ。時間に余裕があると踏んで一度部屋でくつろぎ、少し早めに食堂へ戻ると、もう配膳が始まっていた。まだ18時15分なのに。これもまた韓国らしい。

慌てて列に加わる。ビュッフェ形式だが、皆さんの勢いがすごい。料理はすぐに空になり、スタッフがせっせと補充する。このエネルギッシュな光景に、なぜだか少し胸が熱くなる。

つられてこちらも取りすぎた。味は本格派で、どれもなかなか美味しい。気づけば満腹。

団体客が多かったこともあり、場はさらに熱気を帯びる。日本の“ふつう”とは、どこか違う。文化の違いなのか、このエネルギーはどこから来るのだろう。背後ではおばちゃんが突然歌い出し、また驚かされる。

もしかすると、この旅で自分が求めているのは、こうした“生命力”なのかもしれない——そんな気がした。まだ出発して間もないのに、感じることがいくつもある。