EP009 Life of Vladivostok 01

死んだように眠った。眠ったというより“意識が落ちた”に近い。そのぶん目覚めは軽く、疲れも抜けている。この日もタスク多め。朝から動きたかったので、隣のホテルの朴さんと8時半に待ち合わせ。一時間進んでいるおかげで、ちょっと得した気分だ。

この日のウラジオストクは曇り、霧も濃い。どこか“ロシア映画”のワンシーンのようでテンションが上がる。距離は日本や韓国と近いのに、街の空気感はぐっとモスクワ寄りだ。

駅前のレーニン像は、人が必ず見上げる高さと角度まで計算されている。像の下で、同じポーズで記念撮影。たまにはこういう観光も悪くない。

駅舎も霧の中。港はすぐ向こうだが、市内は一方通行だらけで、ホテルへは直線400mの距離をぐるっと2km近く回らされる。前日のタクシーは荷物理由で提示額の倍を要求。今にして思えば、最初の額自体が相場の倍だったので、まあまあのボッタクリ。仕方なし。

まずはサミット銀行の両替所へ。ルーブルは日本ではほぼ替えられず、韓国のレートも渋かったので現地両替に賭けたが、これは正解。やや多めに替えたものの、カードが使えない場面が多いので現金はまだ不安。週末で物価感覚を掴んで、月曜に追加両替するか決めるつもりだ。

次はSIMカード。ウラジオストクの車は運転が荒いのに、横断歩道の歩行者にはきっちり止まる。規制が強いのだろうが、この徹底は立派。

キャリアはMTCを選択。今回はFLEXIROAMのグローバルeSIM(ロシアではBeelineと連携)も用意してきたので、冗長性のために別キャリアを確保したかった。

窓口の担当者は無口で表情も硬く、一瞬ひるむ。しかし、言葉があまり通じないこちらにも根気よく説明し、開通確認まで丁寧に対応してくれた。感謝。手続きに時間がかかって後ろに長蛇の列ができたが、誰も文句を言わず、表情も変えずに静かに待っている。ああ、これが“ロシアスタイル”。前日の入国で学んだのも、こういう文化だったのかもしれない。

契約は1カ月無制限(通話&データ)で1,500ルーブル。SIM代や開通料込みで、翌月以降は650ルーブルで延長できる(はず)。

現金と電話番号を手に入れると、ロシアで“人権”を得たような心強さ。これでYandex Goでタクシーも呼べる。

喜んで歩いていたら、前日の“戦友”たちにばったり。こんなに嬉しいとは。いずれにせよ、のちほど通関エージェンシー・GBMのオフィスで合流予定だったのだけれど。

みんなでGBMへ――のはずが、選定理由にした「オフィスに近いホテル」が仇に。GBMは移転済みで、私が自信満々に案内した先は別会社……Google Maps、更新をお願いします。ここではっきりしたのは、ロシアではGoogle MapsよりYandex Mapsのほうが精度も情報量も上ということ。

GBMで今後の流れを確認したのち、税関事務所へ移動して一人ずつパスポートと書類の確認、本人確認。内容は大したことないのに、とにかく時間がかかる。バスがなく徒歩移動だが、線路が渡れず大回りでさらに時間を食う。税関では“偉い人”のタバコ休憩待ちも挟まり、手続き再開まで静かに待機。車両の責任保険や手数料の支払いは翌日へ、とのこと。なるほど。

甘いものが欲しくなり、帰りにホテル前の露店でいちごを購入。食べてみる――やっぱり日本のいちごが世界一美味しい!(偏見込み)

夜は車両組で集まり、労をねぎらってキングクラブを。店はPyatyy Okean(5th Ocean)。

この通りは観光名所らしく若者でごった返している。真ん中は完全に“映えスポット”。

フランスワインも普通に置いてあり、西側制裁の“抜け道”の存在を感じる。値段も法外ではない。市内にはバーガーキングやKFCも通常営業、スーパーには大手メーカーの飲料・酒・食品が並び、戦争の影響は表層からはあまり見えない。人々は“ふつうの生活”を送っている印象だ。

注文はキングクラブ4kg! 同じカニでも、ロシアではキングクラブ、日本ではタラバ、韓国ではテゲ。どれも美味そうだ。

ほかにクマエビ、海鮮唐揚げも頼んで、みんなでワイワイ。苦労は多かったが、“一生語れる武勇伝”がまた一つ増えた。

こういう経験は、お金を払っても買えない。

EP008 Vladivostok

波は高くなかったのに、船は不思議と揺れる。潮流の影響だろうか。とはいえ揺れは強くなく、何より疲れていたのもあってぐっすり眠れた。目を覚ますと、すでに北朝鮮沖を過ぎ、ロシアの領海に入っている。到着予定はウラジオストク時間の17時(日本より1時間早い)。ここからがまた長い。

昼を過ぎるころ、ロシアの島々が少しずつ見えてきた。目的地に近づいている実感が湧く。気温もぐっと下がる。東海市では春のぬくもりだったのに、ここはもう東京の冬並みの冷たさだ。

ふと時計を見ると、電波時計がしっかり働いていてウラジオストク時間に自動で切り替わっている。じつはG-SHOCK選びで一度失敗(GW-M5610U-1BJFは液晶が暗すぎて実用にならず…)。それを聞いた友人が調べて、GBD-200-1DRをプレゼントしてくれた。本当に感謝しかない。

いよいよウラジオストクが見えてきた。行き交うコンテナ船の多さに、戦争の影響はあまり感じられない。

岸が近づくにつれて乗客もそわそわし、デッキには人があふれる。そして皆さん本当によくタバコを吸う。元喫煙者として気持ちは分かるが、それでも驚くほどの本数だ。

お、街並みの全景が見えてきた。あの有名な黄金橋も。

ウラジオストクからユーラシア横断をスタートするソンフンさん・ユワンさん親子にも出会う。ユワンくんは小6で、1年休学して旅に出るという。人生でかけがえのない一年になりますように。友だちのようで兄弟のような、本当に仲の良い親子で羨ましい。

スパソ・プレオブラジェンスキー大聖堂が「ここはロシアだ」と教えてくれる。船上から見る街は想像より都会的で、規模も大きい。

写真で見慣れたウラジオストク港が目前に。ここから本格的にユーラシア横断が始まると思うと胸が高鳴る。予定より1時間早い16時に到着――喜んだのも束の間だった。

ここから、ウラジオストク流の洗礼。入国の仕組みが独特で、まずは岸壁に降ろされたコンテナから全荷物を出して積み上げる(これだけでも相当時間がかかった)。その後、乗客が自分の荷物を見つけて持ち、イミグレーション(入国審査)と税関を通って入国する方式だ。

降りる順番は、①預け荷物なしのロシア人、②預け荷物ありのロシア人、③預け荷物なしの外国人、④預け荷物ありの外国人。覚悟して待っていたが、それでも進みが遅い。審査場のキャパシティにも課題があるのだろう。

しかもイミグレーションまでは階段で2階へ、外に出るにも階段を下る必要がある。重い荷物を抱えての移動は相当きつい。そこで、同じく車・バイクで来た6組で自然とチームを組み、協力して運ぶことに。それでも大変で、あれほど寒いと思っていたウラジオストクなのに汗びっしょりだ。

すべて終えて外に出たのは20時30分。到着から4時間半。これがロシアのオリエンテーションなのだろう。ロシア式の「待つ」「受け入れる」を少し学んだ気がする。そのおかげで仲間も増え、絆も深まった。

宿が隣同士の朴さんと同じタクシーでホテルへ向かい、チェックイン。今回のTeplo Hotelには「20時ごろ着」と伝えていたが、さらに1時間遅れ。支払いはクレジットカード不可、しかもまだルーブルに両替していない。翌日払いをお願いすると、快くOK。部屋が1階なのも助かった。

小さなホテルだが、清潔でセンスがよく、居心地もいい。バイク通関まで約1週間の滞在になるため、いつも以上に慎重に選んだ。Booking.comなど欧米系は使えないので、Yandexで調べてロシアの予約サイト「Ostrovok」を利用。サービスは他と遜色なく、使い勝手も良かった。

シャワーを浴びて夕食をどうするか考えていると、隣のホテルの朴さんから「遅くまでやっている韓国料理屋がある」と連絡。22時を回っている時間帯で開いている店は少ないが、行ってみることに。

まずはビール――まさかのアメリカ・バドワイザー。長い一日の後の一杯は格別だ。お疲れさま。

頼んだのは豚肉炒め。少し甘めだが美味しい。昼はカップ麺で済ませたので、今日初めての“ちゃんとした食事”が余計に沁みる。

朴さんは大学を定年退職後、車でユーラシア横断へ。モンゴルをはじめ多くの国を走った経験豊富なベテランで、アドバイスも優しさも山盛り。たくさんお世話になった。

店を出て会話しながら歩いていると、コンビニからソーセージを手に出てきたロシアの方が声をかけてくれた。夜景スポットを教えたいらしい。Yandex MapとGoogle翻訳で示してくれたのは「鷲の巣展望台(Орлиное гнездо)」。手にはSonyのミラーレス。写真好きとして“ぜひ撮ってほしい景色”だったのだろう。見た目は強面でも、話すと温かい――ロシアの人はそんな印象だ。

初日から、バイクなしでもアドベンチャー感はマックス。ここからどうエスカレートしていくのか、楽しみだ。

EP007 Eastern Dream

いよいよロシアへ渡る日。Duwon商船の担当者から「10時までに東海港3番ゲートへ」と言われていたので、少し余裕を持って出発した――が、その「3番ゲート」が見つからない。最初に「ここが港だろう」と入ろうとした場所は韓国海軍の施設(軍港?)。あぶない。さらに進むと港らしき施設はあるものの、看板はなく重そうな鉄柵のゲートが閉まっている。違うのか? もう少し先には「4番ゲート」の表示。え、どういうこと? さっきの閉まっていた所が3番? Uターンして戻り、前をうろうろしていたら中から警備の方が出てきて、名前を確認してゲートを開けてくれた。

中に入ると、内側からだけ見える「3 GATE」の英字表示……これは外にも書いてほしい。これから行く方は、S-OILのガソリンスタンドを目印にすると良さそうだ。

まずは未払いだったバイクの運送費を精算するため、Duwon商船の事務所へ。クレジットカード不可とのことで、現金ドルで支払い。料金は時期や情勢で変動が激しいらしく、今回は1,500ドル。戦争の影響でかなり上がっているという。

今回、Eastern Dream号でロシアに向かうのは、車4組、バイクは私とBMW R1200GSAの方の2組、計6組。全員がそろったところで、Duwon商船のスタッフから流れの説明がある。

まず、車両から荷物をすべて降ろす。ロシア側では車やバイクへの個人荷物の積載が禁止で、載っていると正式な輸入手続きが必要になり、時間も費用もかさむとのこと。

荷物を降ろして“素の状態”になったバイクで、スタッフ車の先導に従い税関エリアへ。いよいよロシアに渡るのだと思うと、胸が高鳴る。

手続きはシンプル。韓国税関が車体番号を確認し、釜山港で発行された書類を回収して終了。出ていくものに関しては韓国も概しておおらかだ。キーは挿したまま置いておけば、積み込み・下船時の移動はスタッフがやってくれるらしい。

バイクを預けたら乗船までは自由時間。乗船開始は14時。東海港には小さな売店がひとつあり、両替もできるが、それ以外はほぼ何もない。最寄りの食堂は徒歩10分ほど先の東海駅周辺まで行く必要がある。まだ11時半だったので、散歩がてら駅へ向かった。

東海駅前は港よりは人がいるが、それでも閑散気味。市庁周辺の今どきの韓国的な街並みに対し、こちらは“昔の韓国”がそのまま残っているような趣がある。

駅前のグルメストリートには食堂が5軒ほど並び、その中でいちばん辛くなさそうな「ソンジョン・カルグッス(송정 칼국수)」へ。実は韓国に来てから辛くて熱いものが続き、胃の調子がいまひとつ。今日はやさしいものが食べたい。

創業53年の老舗で、いまは二代目。地元で人気らしく、次々と客が入り、またたく間に満席に。危ないところだった。

注文は「マンドゥ・カルグッス」。韓国式うどんに餃子が入った一品で、珍しく胡椒のキレで味にアクセント。マイルドで実においしい。さすが53年の歴史だ。

港へ戻ると、下ろした荷物は「預け手荷物」として送る必要がある。船内へ持ち込めるのは2個まで。まず各荷物の重さを量り、重量シールを貼ってもらう。それを発券窓口へ持っていき、預け荷物の料金を支払い、搭乗券を発行。荷物はその場で預ける。ここまで来て、ようやく乗船。長かった。

今回の座席はEconomy Class(B)。日本のフェリーをイメージしていたが、少し違う。荷物置き場がほとんどなく、足元に置くと足が伸ばせない。手荷物2個までの制限は、このスペース事情ゆえだろう。

二段ベッドがずらりと並び、満席で人が多い。やや収容所感のある光景が、逆に旅の本格的な始まりを告げているようで、妙に高揚する。

朝から荷下ろしや移動で汗だく。まずはシャワーへ。シャワーブースは4つだけの簡素な造りで、シャンプーやボディソープはなし。さらにこの時間はお湯が出ず、水のみ。ただ、暑かったので水シャワーでもちょうど良かった。

後で知ったのだが、シャワーとは別に浴槽もあるものの、お湯は張られていない。代わりにホースの蛇口からはちゃんとお湯が出る。

大阪→釜山の船では「そこはもう韓国」だったように、東海→ウラジオストクの船内は「すでにロシア」。体格の大きい人たちや存在感のあるタトゥーを見ると、つい映画のワンシーンを思い出す。

客室では落ち着かないので共用スペースへ――が、同じことを考える人ばかりでどこも満席。仕方なくデッキに出て、風に吹かれながらビールを一本。風は次第に冷たくなっていく。北上している証拠だ。波も風も強くは感じないが、船はそこそこ揺れる。潮流のせいだろうか。船酔いの人もちらほら。

夕食はビュッフェで、韓国料理多め。味は普通においしい。ただし食堂への酒類持ち込みは禁止で、注文も不可。酔客で宴会化するのを避けるためかもしれない。食後、バーでビールを一本だけ飲み、就寝。揺れが心地よく、ぐっすり眠れた。耳栓は忘れずに。

長い一日だった。

EP006 Kangwondo

大田(デジョン、대전)から江原道(カンウォンド、강원도)の東海(ドンヘ、동해)市までは、下道で約300km。山が多い地域なので峠道を考えると時間がかかりそうだし、午後からは雨予報。できるだけ早めに動きたい。

「東横イン 大田政府庁舎前」は朝食が6時半から。5時半に起きて身支度を済ませ、しっかり食べて出発。

その前に、ホテル横のハイオク対応スタンドで満タンに。DesertXは21L入るので、この一回で東海まで余裕のはず。給油機の質問がやたら多く、しかも急かされるのは相変わらず。カード決済は先に約1万5,000円を仮決済し、給油後に取消して実際の金額を請求する方式。国や文化でシステムが変わるのが面白い。ロシアは“先払い→給油”らしいので、それもまた体験が楽しみ。

大田から北東へ国道を進むが、休憩ポイントがなかなか見つからない。約2時間走って槐山郡(ケサングン、괴산군)でようやくセブンイレブンを発見して休憩。店内にトイレがあることを期待したが、ここにはなし。甘くないコーヒーで一息つきつつ、トイレ問題に悩む……が、悩んでいても仕方ないので再出発。

バイクにまたがり進路を迷っていたその瞬間、右側へ“ストン”。踏ん張ってみたが重さに勝てず、ダメージが少ないようにゆっくり寝かせるしかなかった。旅の“初・立ちごけ”。人も車もそれなりに通る場所で良かった。韓国区間は、ロシア前のオリエンテーションとして、優しめの条件でいろいろ試せていると前向きに捉える。

外せる荷物を降ろしてひとりで引き起こしに挑戦したが、これが難しい。YouTubeでイメトレしていたものの、あの投稿者たちは間違いなく怪力だ。アドベンチャーバイクはそう簡単に起こせない。助けを求めようにも近くはご年配ばかりで頼みにくい――そこへ一台の車が止まり、爽やかなお兄さんが「手伝いましょうか?」。神。二人がかりでなんとか起こせたが、ひとりだと厳しい。モンゴルに行く前に練習しておこう。

被害は右パニアに軽い擦り傷だけ。Ducati純正パニアは丈夫で、強化プラの傾斜が衝撃を逃がしてくれた。Unit Garageと迷ったが、頑丈さで純正を選んで正解。

アドレナリンでトイレ欲求は一時的に消えたが、しばらく走るとやっぱり限界。さらに一時間走って、スタンド併設のトイレを見つけて無事解決。後でTwitterでも「韓国はコンビニにトイレがないことが多いので、少し大きめのカフェや飲食店の入る建物、公園を狙うと良い」と多くのアドバイスをいただいた。感謝。

たくさんのアドバイス、ありがとうございました!

トイレの次は、当然ながら“飯”。忠清道(チュンチョンド、충청도)から江原道へ抜ける道は山・川・湖が美しく、観光地としても有名。店は多いが、辛いチゲ(メウンタン)や焼肉が中心で、ひとりで入りづらい所も少なくない。見た目の好みから外れる店も多く、贅沢とは分かりつつも迷う。

そんな中、店の前を通ると満足げに出てくる人たちの表情が目に入り、「ここは間違いない」と直感して入店。

駐車場の混み具合でも再び確信。ヘルメットを外してカバンに置くと、目に入ったのはUTPのステッカー。フィジカルにはひとり旅でも、実感としては家族や友人、先輩後輩、SNSのフォロワーと一緒に旅している。つながりが大事。このブログも、その共有のために更新している。

人気店ゆえ店内は満席で、テラス席へ。ひとりで頼めるのは胡麻カルグクスか胡麻スジェビのみ。昨日はカルグクスを食べたので、今日は胡麻スジェビに。日本の“すいとん”に近いポピュラーな料理だが、この胡麻スジェビは初。郷土料理らしく、久々のやさしい味が心身に染みた。人気の理由がよく分かる。

お腹が満たされると景色が一段と鮮やかに見える。山も川も本当にきれいで、こういう自然を求めて多くの人が都会から訪れるのだろう。

東海まではもうひと踏ん張り。正直、これまでの韓国の道は高速道路のような国道ばかり走ってしまい、バイク的に“面白み”が少なかった。しかし江原道の道はほどよいワインディングと美しい自然が合わさり、走っていて実に楽しい。ツーリング中のバイクとも初めてたくさんすれ違った。

ただし一つだけ困りものが“縦溝”。特に急なカーブや峠に多く、出てくるたびに寿命が縮む。車には有用らしいが、バイクとは相性が悪く、フロントのグリップ感が薄れ左右に振られやすい。道が険しくなるほど増えるので、精神的にも削られる。

文句を言いつつも、目的地の「Donghae Oceancity Residence Hotel」に無事到着。下道300km、立ちごけ1回、逆走3回――慣れたと思った頃がいちばん危ない。大きな道では平気でも、細い道に入ると癖で左側へ寄ってしまう。対向車でハッとして右側へ退避、なんてことも。もっと意識していこう。危ないから。

今回の宿はレジデンスタイプで、火曜のウラジオストク行きフェリーまで連泊予定。ロシア前にしっかりメンテしたくて選んだが、設備十分で価格も手頃。唯一の難点は室温が高めで調整しづらいこと。特にオンドルの熱気が強い。ただ、その分洗濯物はすぐ乾く。

近所のコンビニに寄ると、缶ビールがずらり。コロナ前は韓国ビール一色だったのが、今は輸入物とクラフトが目立つ。正直、昔ながらの韓国ビールは“お世辞でも…”というものが多かったので、みんな気付いたのかもしれない。

サントリーのプレミアムモルツを見つけ、嬉しくて500mlをつい2本。やっぱり自分にはこれが一番合う。大好き。

軽く一杯やってくつろいでいると、もう夕食の時間。周囲に店は多いのに、日曜のせいか閉まっている所が多く、ようやく見つけたのはスンデグッパ専門店――しかも“辛い”やつ。

辛くないスンデグッパを頼んだつもりが、やっぱり辛かった。でも美味しい。そろそろ刺激弱めのものを選びたいところ。

いよいよ、韓国での旅も最終盤。

EP005 Ducati Daejeon

ロシアに渡ると当分はDucatiのディーラーがない。気になる箇所だけでも見てもらおうと、ウラジオストク行きフェリーが出る東海(ドンヘ、동해)へ向かう途中にあるDucati Daejeon(大田〈テジョン、대전〉)を目指した。都合がいい立地だ。

ホテルを出てしばらく国道を走り、少し飽きてきた頃にナビが迂回ルートを提案。日本の県道のような道へ入ると、ようやくツーリングらしい気分になる。コチュジャンで有名な淳昌(スンチャン、순창)には、見事なメタセコイア並木。久しぶりにバイクを停めて記念撮影――やっぱりこういう道が好きだ。

ところが、テンションが上がったところでまた雨。それも土砂降り。昨日も今日もずっと雨だが、北海道での経験と全身ゴアテックスのおかげで致命的にはならない。とはいえ、晴れてくれるに越したことはない。

昼はひとりでも入れそうな店で、アサリの味噌チゲを注文。ここ数日辛いもの続きでお腹の調子がいまひとつなので、今回は“辛くない”を選ぶ。韓国で辛くないメニューを探すのは、なかなか骨が折れる。

アサリのすっきりした旨みと味噌のまろやかさが胃にやさしい。そろそろ和食も恋しくなってきた。

食後も雨は止まず、とりあえず国道に戻って大田へ。北へ行くほど気温は下がり、山道が増えて道も険しくなる。縦溝がある区間は特に走りづらい。右ヘアピンは相変わらず手強く、早く慣れないと今後に響きそうだ。

二時間ほど走って限界を感じ始めた頃、田舎のスーパーが現れる。嬉々としてバイクを停め、缶コーヒーで小休止。韓国版ジョージアは驚くほど甘い。辛いものはとことん辛く、甘いものはとことん甘い――極端さが面白い。

休んでいるうちに空が明るくなり、そこからは順調。あっという間にDucati Daejeonへ到着した。

店は“バイク屋”というより高級ブティック。

大きな窓から差し込む光が、Ducatiの美しい車体にくっきりとコントラストを与えている。実に気持ちがいい。

サービススタッフが足まわりと空気圧をチェックし、積載重量を考慮して少し高めに調整。ほかに問題はなし。これで安心してロシアへ渡れそうだ。

Ducati Daejeonの皆さん、丁寧な対応をありがとうございました。

宿は店の近くに押さえていたので、この日のメインはここで終了。

予約したのは「東横イン 大田政府庁舎前」。韓国にも東横インがあるとは知らなかった。システムも部屋も、あの“安定の東横イン”そのままでちょっと嬉しい。

シャワーのあと地下駐車場へ降り、二日連続のチェーンメンテ。どうやら明日も雨らしく、三日連続になりそう。きれいになったチェーンを見ると気分が上がるし、頑張ってくれているバイクに少しでも恩返しができた気がする。

晩ごはんはカルグクスと

ワンマンドゥ。

周辺には店が多いのに、営業しているところが少なく、開いていても“ひとり不可”の店が多い。逆に客が誰もいない店は不安だ。その点、このカルグクス専門店はひとりでも問題なく、客入りもよくて安心。料理はおいしく、しかも安い。量は多めだが、あまりに美味しくて完食してしまった。ちょっと食べ過ぎたかもしれないが、明日は東海(ドンヘ)市まで下道で約300km。しっかり栄養をつけておこう。